外来性ゲノミックアイランドの水平伝播の分子機構

  • 研究トピックス
  • at 2007/7/02 15:21:09

Interstrain transfer of the large pathogenicity island (PAPI-1) of Pseudomonas aeruginosa

Xiaoyun Qiu, Aditi U. Gurkar, and Stephen Lory

PNAS 103 (52):19830-19835 (2006)

細菌の迅速な環境適応や機能進化には、様々な外来性遺伝子の水平伝播による機能獲得が重要な役割を果たしている。同一の属や種内の菌株ゲノム比較などによる解析に基づき、染色体支配の病原因子や共生窒素固定能、難分解化合物分解能に関わる諸々の遺伝子はゲノミックアイランド(GI)と総称される外来性遺伝因子上に存在することが往々にしてあると、提唱されてきた。ただ、ほとんどのGIは、宿主染色体に挿入された後に様々な再編成を受けることで、その水平伝播能を失っている。Loryグループは、本論文に先立ち、ヒト・動物・昆虫・植物に病原性を示す緑膿菌PA14株に特異的な108 kbの病原性アイランドPAPI-1の構造を明らかにしていた。本論文では、PAPI-1は、PA14株染色体の別の箇所にも移動可能であることを示すとともに、他の様々な緑膿菌株の染色体にも水平伝播可能であることを示した。そして、PAPI-1末端にコードされる部位特異的チロシンリコンビナーゼIntが、PAPI-1の水平伝播に先だって起きる染色体からの切り出し・環状化に必要であることを示した。一方、PAPI-1の別末端には、低コピープラスミドの分配装置を構成するSoj (ParAと同一)のホモログがコードされていたが、本ホモログ遺伝子破壊はPA14染色体からのPAPI-1消失をもたらした。この結果に基づき、染色体から切り出されて環状化したPAPI-1の細胞内での安定化にSojが寄与していると筆者らは推定した。かなりのGIにおいて低コピープラスミドの複製・分配装置のホモログ遺伝子が見出されていたが、これら遺伝子の存在意義は不明であった。本論文により、これら遺伝子の機能の一端が解明できる糸口が開かれたといえよう。ただ、PAPI-1上には一目で分かるようなParBやRepAのホモログ遺伝子が存在せず、PAPI-1のSojと共同して働く遺伝子やその産物の同定、そして、これらの機能の詳細な解明が待たれる。PAPI-1の菌株間水平伝播に関しては、伝達性プラスミドでの接合伝達と同様の機構で起きると推定され、これに関わるPAPI-1支配遺伝子候補がリストアップされているが、これら遺伝子の機能解明も今後の課題といえよう。本論文では、緑膿菌の菌株間でのPAPI-1水平伝播能を示しているが、種や属を超えたレベルでの水平伝播能を検討することで、細菌の機能進化に対するGIの重要性の一層的確な提示が期待できよう。


投稿者:東北大学大学院生命科学研究科 津田雅孝


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